グロース「時価総額100億」時代の新IPO戦略とは ストライク荒井邦彦社長に聞く

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東証グロース市場の上場維持基準が変わることで新IPO戦略が必要になると語るストライクの荒井邦彦社長

東京証券取引所のグロース市場の上場維持基準の改定が、新規上場(IPO)を目指すスタートアップや中堅企業に衝撃を与えている。IPOを目指す企業は、大きな戦略転換を迫られているのだ。そこで、ストライクは2026年1月14日に東京都内で「時価総額100億円時代の上場戦略」をテーマにしたセミナーを開き、基準改定に対応する「新IPO戦略」を紹介する。同社の荒井邦彦社長に、セミナーの狙いと背景を聞いた。

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新IPO戦略が求められる理由

―東証グロース市場の改革は企業に、より早い段階で機関投資家が投資対象とする規模への成長を促す狙いがあります。その一方で、成長期待度が高くても時価総額が届かない企業が排除される可能性も懸念されています。なぜ今「新IPO戦略」が日本企業に求められるのか教えてください。

新IPO戦略が必要とされている背景には、東証がグロース市場の維持基準を厳格化したことがあります。従来の「10年で時価総額40億円」という目安が、「5年で100億円」という水準に引き上げられ、企業に対してより速い成長スピードが求められるようになりました。東証は「上場基準を厳しくしたわけではない」と説明していますが、中堅企業の間では「ある程度の企業規模にならなければ上場しづらい」という空気が広がっています。

しかし、本来IPOとはゴールではなく成長のスタートラインです。上場によってリスクマネーを調達し、さらに成長し続けるための資本市場の活用こそが大切です。小粒上場のまま成長が鈍化してしまう企業が増えた反省から、再び「上場=成長の加速装置」という本来の意味を取り戻すことが重要になっています。そうした観点から、新IPO戦略は単なる新基準への対応ではなく、上場後を強く意識した資本戦略そのものを再構築する取り組みと言えるでしょう。

―新IPO戦略で、地方証券取引所(地証)への上場が再び注目される理由は何でしょうか。

東証グロースの基準が事実上厳しくなるなか、企業が十分大きく育つまで上場を待たなければならないケースが増えています。一方で、もっと早く市場に出て、社会的信用や成長資金を確保したいと考える企業も少なくありません。

そこで再び脚光を浴びているのが、地証を活用した「ステップ型上場ルート」です。ファーストリテイリングやニトリホールディングスなどが地証を経て東証へ進んだように、地証には「地域における上場予選」という役割があります。企業が早期に市場へ出る機会を失わないようにするための受け皿として、地証の機能が見直されているのです。

地証自身も積極的に市場活性化に取り組んでおり、企業にとっては多様な上場ルートを選択できる環境が整いつつあります。こうした背景から、ポスト・グロース市場時代における重要な選択肢として地証が再評価されています。

―新IPO戦略に関わる上場準備企業や経営企画、IR(投資家向け広報)担当者へ向けたメッセージはありますか?

まず強調したいのは、IPOを目指す気持ちを弱めないでほしいということです。東証の上場維持基準が厳しくなったとはいえ、資本市場を成長に生かすという役割は何ひとつ変わっていません。むしろ、今こそ資本市場を活用する姿勢が大切です。

IPOはあくまでスタートです。上場後も二度、三度とエクイティファイナンスを実施し、リスクマネーを継続的に取り込むことで企業価値を高めていくことこそが、本来の資本市場の使い方です。実際には上場後にまったく追加ファイナンスを実行しない企業も少なくありませんが、本来手にしている「成長の権利」をもっと使うべきだと思います。今回実施するイベントでも、上場を到達点ではなく、単なる「成長の通過点」と捉える視点をぜひ持ち帰っていただきたいと思っています。

人と情報が一気につながる

―今回開催される新IPO戦略イベントに参加することで、どんなメリットが得られますか?

今回のイベント最大の魅力は、日本全国の証券取引所の実務担当者が一堂に会するという点です。コロナ禍後ではほとんど例がなく、各証券取引所の考えや本音をライブで聞けるのは非常に貴重な機会です。

イベントでは全国の証券取引所の実務担当者が集う
イベントでは全国の証券取引所の実務担当者が集う

名刺交換会や交流の時間も設けており、取引所、金融機関、専門家、支援企業など多様なプレイヤーたちと直接話せる場になっています。参加者同士のネットワーク形成や情報交換の価値は大きく、リアルイベントならではの熱量や臨場感を得ることができます。「人と情報が一気につながる体験」こそが、このイベントの最大のメリットです。

―最後に、ストライクは新IPO戦略にどう関わっていくのでしょうか。

ストライクはM&Aを通じて企業の成長を加速させることを得意としており、新IPO戦略においてもその強みを生かしていきます。具体的には、上場前に企業規模を拡大するM&Aをサポートしたり、成長段階に応じて最適な市場選択や上場タイミングを見極めるための助言をしたりするなど、企業の成長を後押しする支援を強化していきます。

ストライクを通じてM&Aを行い、その後上場を果たした企業も既に存在します。この蓄積されたノウハウを活かし、地証ルートでのIPOを選ぶ企業にも、ある程度大きく育ってから東証グロースを目指す企業にも、それぞれ最適な伴走支援を行っていきます。

ストライクはIPOを「成長の加速ポイント」として捉え、企業が資本市場を最大限に活用できるよう、引き続き支援の幅を広げていきたいと考えています。

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